Origin Diary - Friday 5th July 2013
今日は今回のOriginプロジェクトの中でも、重要な工場見学の日。
ヴェニスの北、ヴィツェンツァには、多くのラグジュアリーブランドを支える工場がある。
今回は3つの工場を見学することに。
最初は、イタリアの高級紳士服ブランドPal Zieri を作る
イタリアのトップファクトリー、Forall Confezioni(フォーラル・コンフェツィオーニ)へ。
Pal Zieri
http://www.palzileri.com
工場では、黙々と働くイタリア人の姿が。
流れ作業で、それぞれのパーツごと、縫い合わせて、スーツが完成するらしい。
ずっと手縫いをしてる人もいたり、ひたすら、検品をする人がいたり、
気の遠くなりそうな作業を毎日続けているんだなぁ・・・と思うと
デザイナー一同、みんなため息。
仕立ての良いイタリアのスーツはこうやってできているんですね。
大量な布が積み上げられている棚など、とても迫力がありました。
検品を何度も何度も繰りかえし、3回のチェックを受けて合格したものだけが、
市場に出回るということです。
ファッションというと華やかな世界に思えるけれど、実際に支えている人たちは、
こういった、地道な作業をする人たちなんだよね・・・と思いました。
次に見たのは、高級靴の工場、Stephen Venezia。
Stephen Venezia
http://www.stephen.it/
この工場では、Martin Margiela(マルタン・マルジェラ)や
Viktor & Rolf(ヴィクター&ロルフ)の靴など、高級ブランド靴を製作しているそうです。
なぜか、工場はクーラーがなく、猛暑の中、みんな作業をしています。
(エアコンは皮によくないから?)
工場にある山ほどの沢山の木型は、多くのブランドから発注を受けて、様々な形の靴を
作っているのだな・・・というのが伺えました。熱を加えて皮を伸ばす機械があったり、
色々な工程が見れてとても興味深かった。
高級な靴が10万以上するのも、わかるような気がする・・・という程、
細かいディテールにこだわりながら、一つ一つ作っていました。
今回のOriginメンバーのうち、3人がレザーを使って制作するデザイナーだったので
彼らも、皮加工の工程を説明してくれました。
最後に見学したのが、テキスタイルの会社、Bonotto。
Bonotto
http://www.bonotto.biz/
ここの会社は3つの工場見学の中でも、特に印象的な工場でした。
Higo Boss(ヒューゴボス)やArmani(アルマーニ)
ツモリチサトなどをクライアントに
持つ、とてもアーティスティックなポリシーのちょっと変わった布の工場。
まず、この会社のユニークな点は、工場内のいたるところに、アート作品があるところです。
この会社のオーナーは、アートに収集家としても有名との事。
入り口にはなんと、私の好きなアーティストである、ナムジュンパイクのビデオアート作品が!
「私達は、アートを身近に置くことで、クリエイティブなエネルギーを得たいと考えています。」
とオーナー。
工場の片隅には、アーティストレジデンシーとして、作品を作るアーティストもいました。
彼は、ニューヨークのフルクサスというアーティストグループの1人、Geoffery Hendricksでした。
私は、高校生の時、フルクサスのアーティスト、ヨーゼフ・ボイスなどに憧れていたので
まさか、同じフルクサスのグループのアーティストにここで会えるなんてと感激しました。
どうやら、この工場のオーナーはフルクサスのアートが特に好きで集めているようでした。
同じフルクサスのメンバーえあったOno Yokoの
大きな布に「Dream」と書かれた作品も、工場に掲げられていました。
この作品は、Ono Yokoがこの工場で制作したものだという事でした。
布の制作に使う機械も、木造のとても古い機械を使ってて、とてもアナログな世界。
世界中の色の違う羊を集めて作ったパッチワークの様な布も、面白かったです。
「羊は、食べ物も同じものを食べているのに、地域によって色が違います。
この様々な地域から集められた繊維を使って布の世界地図を作っているにです。」という発言に、
この人たちは、ただ、工場で布作りをしてるわけではなく、アーティストなのだと思いました。
中にはチョコレートの包み紙のフォイルを織り込んである布、
ワッフルの様な凹凸があるものなど、とてもユニークでアーティスティックな生地が沢山ありました。
「私達は基本的にデザインのオーダーを受けて制作することはほとんどありません。
世界中の沢山のファッションデザイナー達は私達の作った布を選んで買いに来るのです。」
という言葉に、ただの布の工場ではなく、アーティストとしての自信を垣間見れました。
とても、クリエイティブでアーティスティックなポリジーのある、
素晴らしい会社だと思いました。私はジュエリーデザインなので、布とは無縁ですが、
自分が洋服のデザイナーだったら、こういった、アーティスト魂のあるテキスタイルカンパニー
と仕事をしたいと思うほど、素敵な会社でした。
この日は、工場見学のの後、それだけでも結構充実していたにもかかわらず、
2つの卒業制作展のファッションショーも見ることになっていました。
心地よい涼しい空の下、アウトドアのファッションショーは、
とても、エキサイティングで緊張感があって素晴らしいでした。
生徒達はきっと、この日の為に、沢山の時間を費やしてきたんだろうなと思うと
私自身も、同じ思いで作品を作っているので、しっかり見てあげようと思いました。
いくつか、私の好きなデザインもありました。
この中から、未来のファッションデザイナーが生まれていくのかな・・・。
この日も夜遅くまでデザイナー達と交流しました。