Jar Exhibition at Met
Jarという名前を知らない人は多いと思います。
Jar(Joel A. Rosenthal)は世界的に有名なジュエリーアーティストです。
彼の名前を最初に聞いたのは、F.I.Tの学生の頃でした。
授業の中で、数人のジュエリー学科の教授から、Jarの名前は出てきました。
ほとんど表舞台には出ず、コマーシャルな世界とは無縁なジュエリー職人であり、
今の現役のジュエリーデザイナーでは最高峰のジュエリーアーティストだという事でした。
私は以前サザビーズのオークションでJarの作品を見る機会がありました。
しかし、今回はなんと400点もの作品がメトロポリタン美術館に並ぶというので、
早速見に行ってきました。
ルーシールーと写真をとるJar
Jarは、パリを拠点に活動していますが、もともとはニューヨークのBronx出身で
なんと、ハーバード大学で美学・美術史を勉強していたそうです。
私も日本の大学では、美術史を専攻していたので、なんだかちょっと親しみが持てます。
ハーバード大学を卒業後、すぐにパリに移り住み、脚本の仕事などをしていたらしいです。
しかし、その後ジュエリーアーティストの弟子入りをして、実務からジュエリー制作を学び
現在70歳で、ジュエリーアーティストとして35年以上のキャリアになるとのこと。
パリに小さなお店を抱え、4人のアシスタントと共に、1年で100~120点もの
作品を生み出しているそうです。
彼は、表舞台に出ることを好まず、スポンサーがつくチャンスがあっても、
スポンサーの言いなりになる事を好まないという理由で断り、
作品をマガジンの撮影やレッドカーペットに一切貸し出さないことでも有名です。
そのような理由から、これだけ作品を作りながら、あまり表に名前が知られていません。
とはいえ、彼のクライアントには、グウネス・パトロウやマドンナなど
早々たるセレブリティたちがいます。
彼の作品の特徴はパヴェセッティングで、小さな石がぎっしりつめられています。
素材もゴールドやシルバーにとどまらず、アルミニウムやチタニウム、木、本物の昆虫の
羽根など、ファインジュエリーの枠に留まらず、ユニークな素材を使っています。
今回ここまで大規模なJarの展覧会をアメリカで開催されたのは、初めてです。
(以前、ロンドンでは展覧会を開催した事があったみたいです。)
蝶やお花をモチーフがとても多かったです。
表に出ることを嫌うJarがなぜ今回メトロポリタン美術館での展覧会を決めたかというと、
ニューヨークに住んでいた頃、メトロポリタン美術館とアメリカ自然史博物館は大好きな場所で
いつも鉱石のセクションを見たりしていた思い出もあったからと、あるインタビューで答えていました。
今回のメトロポリタンと次のヴェネツィアでの展覧会を最後にしたいと思っているようです。
70歳のJarも、そろそろキャリアの最後のステージを迎え、最後に少しだけ表舞台に出る
気持ちになったのかもしれませんね。
沢山の蝶のブローチは並べてあると、蝶が壁にとまっているみたいで、とても綺麗でした。
少しルネ・ラリックのアールヌーボーっぽさを感じさせる作品。
ミュージアムショップにはこの作品を実際に3Dスキャンをして
作ったシリコンのイヤリングが売っていましたが、ゴールドでないにもかかわらず、
なんと、価格が$4000。それでも、ミュージアムショップのお兄さんいわく、
結構良い売れ行きとの事。びっくり。
スーパーリアリズムを追求したような、まるで本物そっくりの木を彫って作ったアイスクリームや
パイも並べられていました。
Jarって割と固い職人かと思いきや、こんな遊び心もある人なんですね。
謎に包まれていた感じのJarでしたが、展示の仕方や作品を通じて、少しだけ
彼のキャラクターが見えたような気がしました。
正直言うと、私は、スーパーリアリムズを追求した作品というのにはあまり興味がないのですが、
(むしろ、抽象的な形の方に興味がある。)このJarの作品は相当な技術の追求を感じされる作品の数々でした。
ちなみに、Jarは香りにこだわりがあって、香水のプロデュースもしているらしく、
彼の香水は、NYの高級デパート、バーグドルフで売っています。
Muskとフローラルのナチュラルな感じの香りらしいです。
1オンス(30cc)で$325との事。
なかなか一度に、こんなに多くの作品が集まることなんて、もう当分はないと思うので、なるべく
もう一度展覧会を見に行ってみようかな・・・と思いました。
ちなみにJarの展覧会はメトロポリタン美術館で3月までやっています。