Sleep No More
先日、シェイクスピアのマクベスをモチーフにしているという体験型演劇、
「Sleep No More」に行ってきました。
周りの人から、「すごかった。」「また行きたいと思う。」という評判の声が
聞こえてきていたので、ずっと気になっていて、いつか行こうと思っていたのですが、
先日、ついに念願叶い、行ってきました。
体験型の演劇?と思うかもしれませんが、この体験型の演劇は、普通の観客が
舞台の演技を見るのとは違い、お客さん自身が会場を移動して、役者が演じる
様々なシーンの断片を見て周るというというスタイルです。
この演劇の舞台となっている場所は、チェルシーのギャラリー街にある古いホテル、
McKittrick Hotelです。
このホテルは1939年にOpenしたホテルで、第二次世界大戦前にクローズしていましたが、
この演劇の為に72年の時を経て、再オープンしました。
昔のラグジュアリーなホテルの空間が、時間を経て、怪しげな洋館の雰囲気をかもし出しており
とても興味深い空間でした。
お客さんは入場する時にマスクを渡され、中ではけして話してはいけないし、
写真も撮ってはいけないと言われます。
一緒に来たカップルも、入場の時には、ばらばらに入る形になるので、
他のお客さんもみんなマスクをつけていると、知り合い同士お互いに探すのは困難です。
そんな心細い状況の中で、目の前で繰り広げられる、演技の断片のシーンを追いながら、
4フロアほどあるホテルの空間を行ったりきたりしながら過ごします。
観客は鳥のような変なマスクをつけて古いホテルの空間に放たれます。
消してしゃべってはいけないので、少し異様な雰囲気です。
観客はマスクをつけることで完全にアノニマス(匿名)になります。
会場のあちらこちらで繰り広げられるショッキングなシーン。
演技は全体のストーリーの断片でしかないので、
何が起こっているのかを会場を回りながら繋げていく・・・。
まるで、ロールプレイングゲームに入り込んでしまったような感覚。
ホテルの中を歩いていると、様々な興味をそそる空間に出会います。
これは、剥製やドライフラワーや、骨などが置いてある、まるで生物学者の研究室の様な部屋。
他にも、精神病院の病棟の様な空間、クラシックなインテリアで飾られている重厚な空間、
お墓、木が沢山ある迷路の様な空間などの空間があり、安っぽいお化け屋敷の様な
感じではなく、ひとつひとつの本物のアンティークで作られておりセットのクオリティの高さに
関心させられます。
舞踏会のシーンもあり、しばらく、このシーンを見ていると、まるで夢の中にでも
潜り込んでしまったような感覚に陥りました。
観客は、何が起こっているのか理解しようと、役者の後を追いながら会場を移動します。
役者は周りにいる観客がいないものとして、淡々と演技をします。
自分が透明人間とか幽霊にでもなって、人の動きを見ているような
とても不思議な感覚になります。
何を隠そう、実は、マスクが家に15個以上ある私(笑)。
前のファッションショーで使ったマスクとか撮影で使ったマスクとか自分で作ったマスクなど
集めているわけでもないのに、なぜかマスクがたまってくるんです。
今回もこの鳥型マスクももらって帰りました・・・。
これだけマスクばっかり集まったらいつか家でマスクパーティができるかも~。
今回、このショーを見て思ったのは、ただ観客としてステージ上の演技を見るのではなく、
その空間に入って実体験をするという事はとても、自分の感覚に直接訴えてくるんだな
という事です。文学にしても、アートにしても、ファッションにしても、様々な分野の
アーティストが今すでにあるスタイルを壊して、新しい価値観を生み出そうとしている中で、
このSleep No Moreはそういった意味では、今ある演劇に対する新しいスタイルへの
挑戦という風に感じました。
どんな分野であれ、新しいことに挑戦している人には、とてもリスペクトを感じます。
私も、こういった新しいスタイルへの挑戦を見ると、自分自身の活動でも、
既存のスタイルに甘んじることなく、常にチャレンジをする姿勢を持ち続けたいなと思いました。
このチケットは公演を重ねるにつれて、人気が出てきて価格も現在は1人、$110と
かなり高くなってきています。
それを高いとするか、安いとするか・・・・、それは人それぞれの感じ方でしょう。
ただ、言えるのは、この体験型演劇の感覚は体験した人にしかわからないものがある
という事です。
この少し、Spooky(不気味)でNoir(暗い)な空間は私にとって、とても刺激的でした。
見終わった後、こんなに戸惑うものもそんなにないでしょう。
しかし、ここで演じている役者さんたちは、毎日この薄気味悪い空間で
薄気味悪い演技を繰り返して、精神的に病んでしまわないのかな~と思いました。(笑)
私だったら、きっと1日も耐えられないかもしれない・・・。
Sleep No More 公式ページ
sleepnomorenyc.com